*admin*entry*file*plugin| 文字サイズ  

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


 仕事先の人間と話していたら、妙な雲行きになった。
 どうも、相手が私のことを頭から馬鹿にしているようなのだ。困った事態だ。私は感情抑制物質分泌線手術を受けているため、感情に左右されることがない。これはどんなことでも冷静に受け止めることができる非常に快適な状態なのだが、こういう事態には不向きだ。
 今、彼は上機嫌で自分の説を得意げにまきしたてている。相手のことを低く見ることで、自分のことを相対的に高く感じているのだろう。つまり、私は彼の機嫌のために卑下されているわけである。
 しかし、どれほど馬鹿にされようとも、私の感情は害されることない。だから、このまま話をおえて何事も起こさず別れても、ストレスが生じることもない。そうやって受け流してしまおうかとも考える。
 だが、それをやってしまえば、この愚かな男を調子にのらせてしまい、これ以降の交渉に問題が生じる可能性がある。彼とこれ以後仕事を続けるうえで、それは少々デメリットだろう。私と彼の2人でどこかを訪問する時に、この性質が出されたら厄介だ。
 こういった手合いを相手にする場合は、怒りを見せつけ、早い段階で会話のペースを自分の側に引き込むのが有効なのは経験上わかっていることだ。面倒だが、怒っておいた方が有効か。そう結論した私は彼の話を聞きつつ、首筋の感情操作装置に手を伸ばし、指で怒りツマミをひねった。
 怒り物質が一気に脳の血管内に分泌される、怒り物質は我先にレセプターへと群がり、その穴を怒りで満たす。神経が高ぶり、体温も上昇する。相手が私の顔を見て、怪訝な顔をしはじめやがる。たぶん怒りが顔を紅く色づけたんだろうな、今さらビビってもおせぇよ、俺は……俺は、怒りたくなんかなかったんだぜ、疲れるし面倒だからな、全部、てめーのせいなんだよ、くどくど俺のことを貶めることばっか言いやがってよぉ、ああン、何様だぁ!? てめぇー!

 はっと気づくと、俺は奴に馬乗りになって顔をボコボコにしているところだった。どうやら時限スイッチが入って、多幸物質が分泌されて怒りが収まってきたようだな。これだけ人を馬鹿にしておきながら、口の中が切れて、ちょっとのあいだ固形物が食えなくなるだけで済むとは、あなたはとても運が良い。
 私が馬乗りを止め、幸せな気持ちになりながら服を整えていると、男はひたすら謝り始めた。もちろん、私は謝罪を受け入れる。お互いいろいろありましたが、これからはうまく付き合っていきたいものですね、と答えて私はにこやかに笑う。彼を許さない理由などどこにもない。私はいまやずっと笑顔だ。さきほど少々殴られたがどうということもない。微笑みながら、手に付いた血をぬぐう。これから彼とよりよい関係になれるだろうと考えると、実に幸せ気分になった。
 楽しくなった私は駅前の花屋で花を一輪買った。家に花を飾る日があっても良いと思ったのだ。そして、感情抑制物質が再度分泌された二駅先で花を捨て、家に帰った。


この記事へコメントする















ヤネウラ

Author:ヤネウラ
私ヤネウラがけっこう衝動的に、ゲームとかTRPGとか漫画とか小説とかジョークとか、そういったものについての思いのたけを書きつらねているブログ。好きなジャンルはSF、推理、冒険、恐怖、幻想、神話あたり。コメント、リンク、トラックバックは大歓迎ですよー(でも内容に関係ないのは勘弁な)。

TRPGのプレイレポートはこちら

「わたしのすきなもの」に関してはこちら。

07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。